問学実践 基本3ヶ条

   「問学」を実践していく上で、「より多く問えば、より多く学ぶ」ことができ、さらに、「より良く問えば、より良く学ぶ」ことができる。これがひいては、最終的には「より良く生きる」ことに繋がる。この「問学」の学びのサイクル(上の図)を繰り替えすことにより、より高度な問い、より高度な学び、そしてより高度な知識・スキル・智恵を得て、人生をより良く生きることができるもの、としています。

 

 しかし、「問学」の利点を述べたものの、問学を実践し始めるのに、気を付けておかなければならないポイントを考えました。それを「問学実践の基本3ヶ条」と呼ぶことにします。3ヶ条とは;

 

 ① 人を傷つけるのでなく、人を活かす「問い」かけをする。

 ② 「勉強」という言葉を使わず、「学び(ぶ)」を使う。

 ③ 知らないことを知り、出来ないことを出来るようになる。

 

① 人を傷つけるのでなく、人を活かす「問い」かけをする。

 

 人は他人だけでなく、自分自身も含みます。問いや質問は、両刀の剣の側面を持ちます。人を傷つける問いもあれば、人を活かし向上させる問いもあります。概して質問が嫌がれる場合、それは質問される人が質問に答えられなくて恥をかくと感じることやその人自身が責められると感じることが起因します。

 その一方で、組織文化等の大家である、マサチューセッツ工科大学のエドガー・H・シャイン(Edger H. Schein) 名誉教授の著書 "Humble Inquiry" では、「謙虚に問いかけること」の目的は、「信頼」につながる関係を築ことであり、それがより良いコミュニケーションや協働につながると述べています。'Ultimately, the purpose of Humble Inquiry is to build relationships that lead to trust which, in turn, leads to better communication and collaboration.' (p.21) 「問い」により「信頼」が生まれ、21世紀に必要な能力とされる「コミュニケーション力」と「協働する力」の源泉を手に入れることが可能になります。

 つまり、人を活かすか否かは、「問い」の中身次第になります。ならば、人を活かす問いを心掛けるべきです。

 

② 「勉強」という言葉を使わず、「学び(ぶ)」を使う。

 

 「強いて勉める」、「勉強」には何か強制されているニュアンスが拭いきれません。そこには、無理をしている感も帯びているように感じられます。何故なら、デジタル大辞書の定義(4番目)によれば、「商人が商品を値引きして安く売ること」があるからです。商人が心の底から喜んで値引きするは考えられません。

 それに対し、「学び」や「学ぶ」には強制の語感はありません。「勉強しよう」より「学ぼう」と言う方が、積極的なニュアンスを感じるのは私だけでしょうか?

 

③ 知らないことを知り、出来ないことを出来るようになる。

 

 これは、学ぶことによって得る「知識」と「スキル」を言い換えたものです。智恵の部分は割愛していますが、前者の二つの観点で始めれば、日々の成長を感じることができるでしょう。

 

 「基本3ヶ条」としまたが、あくまで目安としてです。この3ヶ条を念頭に置いて、日々、行動に移すだけで、前日より良く生きるができるものと思われます。

 

 


(参考文献)

Edgar H. Schein (2013).  Humble Inquiry: The gentle art of asking instead of telling. Berrett-Koehler Publishers, Inc., San Francisco