21世紀スキル(21st century skills)を語る際に、必ずと言いていいほど触れられるのが、ベンジャミン・ブルーム(Benjamin Bloom)による「教育目標の分類学」(Taxonomy of Education Objectives)の中の「思考力」(Thinking skills)に焦点を当てた分類です。その分類は、低いレベルの思考力と高いレベルの思考力に分けられ、それぞれは、「低次思考力」(lower order thinking skills: LOT)、「高次思考力」(higher order thinking skills: HOT)と呼ばれています。さらに、低次思考力には、「記憶」(Knowledge)「理解」(Comprehension)「応用」(Application)があり、高次思考力には、「分析」(Analysis)「統合」(Synthesis)「評価」(Evaluation)があります。すなわち、
①「記憶」
②「理解」
③「応用」
④「分析」
⑤「統合」
⑥「評価」 となっています。(縦で見る方が構造化して理解しやすくなります)
これを、アンダーソン(Lorin W. Anderson)らが改定し、 A Taxonomy for Learning, Teaching, and Assessing: A revision of Bloom's Taxonomy of Educational Objectives を著書として2001年に発表しました。それが現在、日本でもよく見かけるようになったものです。本の題を見て分かるように、副題は「ブルームの教育目標分類学の改訂版(revision)」となっています。思考力の分類は、以下のようになっています。
①「記憶する」(Remember)
②「理解する」(Understand)
③「応用する」(Apply)
④「分析する」(Analyze)
⑤「評価する」(Evaluate)
⑥「創造する」(Create)
高次思考力での最後の2か所の変更をしています。ブルームの分類学の著書は、1956年に発行され、20世紀における教育に影響を及ぼしたものですが、年月が経ち、教育学に関する研究も進み、それを考慮に入れて、上記の改訂をされています。「統合」を削除し、「創造する」が新しく入っているのは、「創造性」の育成がより求められていることが背景にあるのでしょう。
さらに、それぞれの分類が「名詞」から「動詞」、例えば、「暗記」⇒「暗記する」など、になっている点です。何故、「動詞(~する)」変えているかというと、生徒が何かの学習を行う際に、「生徒が~する。例えば、暗記する」など、として捉えようとするからです。このように生徒の学習を動詞で捉えた上で、さらに、アンダーソンらの改訂では、「知識」面(「何を」の部分)を細分化し、どの種類の知識にその動作が属するのかを位置付けようとしています。知識の細分化とは4つの次元(dimension)に分け、
A「事実的な知識」(factural knowledge)
B「概念的な知識」(conceptual knowledge)
C「手続き的な知識」(procedual knowledge)
D「メタ認知的な知識」(Meta-coginitive knowledge)
としています。
この<知識の次元>と<思考力の分類学>を組み合わせて、教育目標を設定して教育を行います。
抽象的で分かりにくいと思われるので、同署から学習の事例を紹介します(p.32)。
教育目標:
生徒は『3R(Reduce-Reuse-Recycle)「減らし、再利用し、リサイクルする」方法(approach)』を『会話に応用する』できるようになる。
これを行うには、以下の「知識の次元」と「思考力」を用います。
知識の次元:
<手続き的な知識>
(注:例えば、自転車に乗る際に、それを行うために必要とされる、一連の動作や過程などの具体的な乗り方に関する知識〈ハウツー知識>のこと )
「3R(Reduce-Reuse-Recycle)「減らし、再利用し、リサイクルする」方法(approach)」が手続き的な知識となります。(事実的な知識でもなく、概念的な知識でもなく、具体的に使える知識になります)
思考力:
<応用する>
(逆に言えば、「暗記する」でもなく、「理解する」でもない。また、高次思考力でもない。)
すなわち、<手続き的知識> × <思考力(応用する)>で教育目標を考え、実行するということになります。
少なくとも私が知る限り、日本の教育で言及されているほとんどが「思考力の分類」の部分だけです。思考対象となる知識の次元に触れられることはありません。2020年に向けた大学入試改革を含む教育改革において、「知識偏重」という言葉が頻繁に使用されているのが影響しているかもしれません。この場合の知識とは、おそらく、「事実的な知識」や「概念的な知識」を指し、それらの知識を「暗記する」ことに重点を置きすぎる教育やそのレベルの知識に関して出題するテストを非難しているものと思われます。
「知識、スキル、智恵を求め、獲得する」ことを目指す「問学」は、「知識偏重」という言葉に踊らされず、その意味を問い、その本質を掴むことを目指して教育実践を行います。
(参考文献)
Lorin W. Anderson and David R. Krathwohl (edit) (2001). A Taxonomy For Learning, Teaching, and Assessing: A Revision of Bloom's Taxonomy of Educational Objectives. Longman