前回のブログでは14年前に綴った「自己効力感」(self-efficacy)に関する文章を紹介しましたが、今回は、「自己効力感」を高めることが非常に大切であるということを、改めて実感したことを述べます。
実施されている学校も多いと思いますが、勤務校は週に一回、朝の朝礼時に英単語の小テストを実施しています。先日に行われたテストは全体的に思わしくない結果でした。小テストの合格ラインを8割以上としているので、それに達しない生徒は再テストを受けることなります。この時の再テスト対象者は、20名を越える人数で、クラスの半数以上でした。
採点していて気づいたのが、今まで出題されてきた単語よりも難度が高くなっていることでした。そのため、英語が苦手な生徒にとっては、発音、スペル、意味などに注意して学習する点で、今まで以上の注意力と努力が求めらるものでした。
「自己効力感」の観点から考えられることは、あまりにも多くの不合格者がいる場合、その影響を受けて自分はできないと感じるようになってしまう可能性が出てくることです。すなわち、自己効力感が低くなってしまい、何もせずに放置すると、それがクラス全体に蔓延していくことが危惧されます。自己効力感が低いままの「自己肯定感」を生徒が抱くことを避けるためには、ここで「他者の励まし」、つまり、教師からの励ましが必要であると感じられました。
ただ単に、テスト結果だけを見て勉強不足と言って生徒を叱るのではなく、努力の量が至らなかった生徒には、努力の量を増やし、再テストで合格するように励ますことが大切です。この際には、具体的な努力とその努力の成果がどのように繋がるのかというビジョンを明言する必要があります。今回は、高校生として文部科学省が求めている英検レベルの単語であることを述べ、そのためには、単語の発音とスペルに関係の克服など、細部にわたって単語をしっかりと学習する努力が求められていることを伝えました。
再度努力することによって、再テストを合格することによって、自己効力感を高める機会とした結果、再テストでは数名を除き合格しました。その数名も、他者の合格を知って2度目の再テストでは合格しました。クラス全員が、新しい単語、それも今までよりも難しい単語を相当の努力をすることで、合格するという体験をしました。前回までのクラス全員の合格を続けていたのですが、今回の合格は意味合いが異なります。それは、今まで行ってきた努力量では乗り越えられない高い壁(難易度)も、努力の量を増やすことで乗り越えるということです。そうすることで、少しではありますが、学ぶ力が向上したように思われます。
このように、「他者(教師)の励まし」⇒「合格」した大多数の生徒だけでなく「他者(教師)の励まし」⇒「不合格」⇒「他者(他の生徒)の合格」⇒「合格」した生徒も、ある一定の難度の試験を合格することで「自己効力感」を再び高めることが出来たのではないでしょうか。
学力がそれほど高くなく、しっかりとした学習習慣が確立していない生徒でも、(再テストを含め)小テストで合格を続け、定期試験で高得点をとることで、地道に自力をつけ、英語検定にも合格するとなると、自己効力感は高まっていくことでしょう。成長が実感できれば、学力も高くなり、学習習慣も身につくようになります。
以上の事例から「自己効力感」と「自己肯定感」の関係を考えると、「自己効力感が低いままの自己肯定感」よりむしろ、「自己効力感の高い自己肯定感」が望まれます。「自己効力感」を高めることを念頭においた指導が大切であることを再認識しました。