前回のブログでは、「資質・能力」や「コンピテンシー」(Competency)の言い換えとして、「知識・スキル・態度」(knowledge, skills, and attitudes)に「価値観」(values)を加えた考え方を示しました。上の画像は、それを図に表したものです。今回はこの画像を用いながら、「問学」と「知識・スキル・態度・価値観」の関係を説明いたします。
上の画像は、「価値観」を中心に据え、それを囲むのが「態度」それも「問い学ぶ(問学)態度」としています。「問学」は「知識・スキル・智恵」を求め、それらを得ることですが、今回は「智恵」の部分は割愛しています。「問い学ぶ態度」で求め、得るのが「知識・スキル」です。それは外円に当たります。この図から、「価値観」から発生する「問い学ぶ態度」は、「知識・スキル」の習得に向かうというイメージが理解できるかと思います。逆に言えば、「知識・スキル」を得ようとすれば、そのようにする「態度」が求められ、また、そのような態度はそれを支える「価値観」を持つことが必要になります。
それでは、「価値観」とは何かとなりますが、日本国語大辞典では、
「人が自分を含めた世界や、その中の万物に対してもつ評価の根本的態度、見方。」
と説明されています。それでは、同辞典では「価値」は、
(1)物事のもっている値うち。あたい。かちょく。
(2)人間の基本的な欲求、意志、関心の対象となる性質。真、善、美、聖など。
(3)ある目的に有用な事物の性質。使用の目的に有用なものを使用価値、交換の目的に有用なものを交換価値という。
との説明になっています。これに加え、私は「満足させるもの」を加えます。日本大百科事典での「価値」の説明の最初は、「われわれが生活していくうえでの必要や欲望を満たし、われわれに満足を与えるものは、いずれも価値あるものとされる」とあります。
英語の Value は、ネット上の Cambridge Dictionary によれば、「貨幣価値」とは別に、
'how useful or important something is'
「何かがいかに役立つか大切であるか」(拙訳)
とあります。ここでは、「役立つ」(useful)以外に「大切である」(important)が述べられています。
以上から、私は「価値」の言い換えとして、
① 有用性
② 重要性
➂ 満足性
の三要素とし、「価値」とします。
「価値観」の英語である values は、同辞書では次のように定義づけしています、
'the beliefs people have, especially about what is right and wrong and what is most important in life, that control their behaviour'
「人々が持つ信念のことで、特に、正しいことや間違っていることに関する信念や、人生において最も重要であるもの関する信念を指し、その人の振る舞いをコントールするもの。」(拙訳)
「振る舞いをコントール」するとあるので、行動を規定するものと解釈できます。
日英の辞書から、私は「価値観」を
「人の行動や態度を規定する、有用性、重要性、満足性、に関する考え」とします。
ここまで、長々と「価値」と「価値観」について述べてきましたが、生徒と教師が「学び」に関する「価値観」を明確にし、それを共有することで、文部科学省が言う「学びに向かう態度」が生まれるのだと考えます。
「知識・スキル」を求め、得る「問い学ぶ態度」は、「価値観」にかかっています。その「価値観」に関して、生徒にとって「学ぶことがどのように役立つのか?」「どのように大切なのか?」「どのような満足感を得られるのか?」という問いの答えが、彼(女)らの「価値観」を形成します。この価値観が、学ぶ内容(知識やスキル)とずれている場合、「学び」はうまく行かないでしょう。「学び」がうまく行くためには、学びの「価値」を明確にし、それについての考えを共有することが不可欠です。
冒頭の画像にあるように「価値観」⇒「問い学ぶ態度」⇒「知識・スキル」によって、効果的な「学び」が生まれ、これらの中身の質が高ければ高いほど、「資質・能力」が高く、コンピテンシーが高く、スキルが高い、と言うことが出来ます。
私は授業をする際に、常に授業の意味や価値を生徒に伝えることを心掛けています。私が授業する内容の意味や価値を伝え、生徒がそれを理解することで、生徒の学びが始まると考えているからです。