以前のブログで述べた「英語教師の3つの座標軸」、つまり、①英語を教える ②(教師自身が)英語を学ぶ ➂(教師自身が)日ごろから英語を使う、ということを実践することで、日本人の英語教師像が立体的に浮かび上がってきます。
概して、この座標軸のうち、①の「英語を教える」が注目されがちになりますが、AI(人工知能)の発展により、それぞれの英語学習者に対して「最適化学習」を提供することが可能になることを考えると、学習者の学習動機の喚起や維持において、②と➂がより重要になると思われます。②の「(教師自身が)英語を学ぶ」姿を生徒が目にすることで、英語学習が「生涯学習」になること知る切っ掛けとなります。また、➂の「(教師自身)日ごろから英語を使う」ことで、どのような体験や経験をしているのかを生徒に伝えることで、英語を使用することで得るものの、具体的なイメージを知ることが出来るからです。
英語学習や英語使用に関して、私は英語を読むだけという、4技能のうち1技能のみに偏っていますが、ほぼ毎日、短時間でも洋書を読んで、情報や知識を得ています。私が面白いと思った知識や英語表現を、授業で生徒に話しています。そうすることで、生徒が少しでも英語学習を、単に大学受験や検定試験を合格するためにするだけでなく、自分自身のもの見方や考え方を広げ深めるためにもすることを気づいて欲しいと思っています。例えば、ブログで紹介した The mind is plastic. という表現は、「知性や知能は可塑性の性質を持つので、何歳になってもそれらを向上させることが出来る」という意味を理解するだけなく、この表現に勇気づけられ、いっそう学ぶことを頑張る気持ちにさせてくれます。<今年の発行された OCEDの報告書 Developing minds in the digital age (2019)では、The brains are plastic. (p.247) の表現を用いて「学習科学」(the science of learning)の原則(principles)の一つとして紹介しています。>
英語学習者と英語使用者のそれぞれを表現する英語に、learn to read「読むことを学ぶ」, read to learn 「学ぶために読む」があります。これらの表現は、読む体験がどのように脳を変えるのかについて書かれた本である Proust and the squid に出てきます(p.135)。類似の表現として、learn to speak「話すことを学ぶ」,
speak to learn「学ぶために話す」あり、これは 21世紀の教育のありかたを述べた本 Most likely to suceed で外国語学習に関しての箇所に書かれています(p.135)。これらの表現が面白いのは、読むことであれ話すことであれ、言語を使用する目的が「学ぶ」ことになっている点です。「学ぶ」こと以外の言語使用の目的もありますが、生きていく上で「学ぶ」ことは避けて通れません。「学ぶ」上での言語使用の大切さを教えてくれる表現でもあります。
(参考文献)
Marynanne Wolf (2008). Proust and the squid: the story and science of the reading brain Harper Perennial
Tony Wagner & Ted Dintersmith (2015). Most likely to succeed: preparing our kids for the innovation era Scribner
OCED (2019). Develping minds in the digital age OCED